マンションと法律
マンションとは
マンション問題を追及すると、マンションの数だけ問題があるといわれている
最近マンション管理問題を取り上げたホームページが急増している。

平成10年度で分譲マンションに居住している所帯数は約340万所帯、1所帯3人として約1000万人を超える人々が、マンションで生活し、それぞれのマンション問題に直面していることになる。

建物の区分所有等に関する法律

建物の区分所有(第1条)

1棟の建物に構造上区分された数個の部分で、独立して居住、店舗、事務所、または倉庫その他の建物として用途に供することがあるときは、その各部は、この法律の定めるところによりそれぞれ所有権の目的とすることができる。
(1物1権主義の例外)

区分所有法
区分所有者全員で団体(3条、65条)

区分所有者全員で団体を構成し集会で管理規約と管理者を定める
区分所有者は、当然に団体の一員であると共に団体への、加入、脱退などということがあり得ない。

  A管理組合法人となる前の団体権利能力なき社団管理組合

団体としての組織を備え、多数決の原理が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、団体としての主な点が確定していることを要する。
(再判昭和39・10・15・民集18巻8号1671頁)

  B管理組合法人(47条)区分所有者の数が30人以上

各区分所有者及び議決権の4分の3以上で管理組合法人を設立、手続きについては別紙のとおり(参考資料2)

管理組合法人を設立しているのは、全国平均5%だそうです。

上手な管理組合の運営とは、マンション内のトラブルを未然に防止し、管理組合の資産をできるだけ増やし、修繕積立金や、管理費の適正な使用を行い、負担を最小限に抑えることが最終の目的である。

管理組合法人の設立のメリット
1、法律関係が明確になる
     不動産登記、電話加入権、預金、等の名義が法人名義となる。
2、団体の財産と個人の財産の区別の明確化
3、銀行借り入れ等がしやすくなる。
4、取引の安全
5、暴力団の排除、滞納管理費の取り立てなど法的行為を行う場合には、原則として総会を招集して決議が必要である。57条、58条、59条
法人の場合には、一般的な事項あるいは、緊急を要する事項に関しては理事会の決議のみで、直ちに処理できる。

管理規約(30条)規約が適正かどうか
規約事項 建物またはその敷地若しくは付属施設の管理または使用に関する事項は、法律で定めるもののほか規約で定めることができる

 建設省作成 標準管理規約に合致しているか参考にする
 参考(中高層共同住宅標準管理規約)(単棟型参考資料3)

17条共用部分の変更区分所有者及び議決権の各4分の3
(規約で過半数に減することができる)

18条共用部分の管理前条の場合を除き集会の決議で決する
(規約で別段の定めをすることができる)

31条規約の設定、変更及び廃止
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

38条各区分所有者及び議決権
原則規約に別段の定めがない限り専有床面積に比例(14条)議決権と共益費管理費の負担は比例するように定める
規約で別段の定め1人1個の議決権でも良い
昭和58年改正前は、所有する住戸1戸につき1個の議決権

57条共同の利益に反する行為の差し止め
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

58条使用禁止の請求
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

59条競売の請求4分の3以上
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

60条占有者に対する引き渡し請求
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

61条建物の一部が滅失した場合の復旧
区分所有者及び議決権の各4分の3以上の集会の決議

62条建替え決議
区分所有者及び議決権の各5分の4以上の集会の決議

マンションの法律
 建物の区分所有等に関する法律では、区分所有者だけで問題を解決することにしている、区分所有者には、義務と責任を規定している。(6条1項、2項)
管理については、管理組合を主体として、重要な管理業務は全て上記のようにいたるところに、用件の厳しい多数決原理を採用しているため、多数決原理の強行により、対立をあおるような規定との説もある。
また管理組合や、管理者は不正は行わないとの善意に基づいて、法律が構成されているため、反対意見が無視されている。
こういうところに今日のマンション紛争の原因がある。紛争には必ず区分所有者間に意見利害の対立があり、分裂しており、管理会社と管理組合との関係においても利害の対立があり、厳しい決議要件を課す事によって一部の反対で何もできないことになる恐れがある。紛争の発生する前なら利害が対立しないので早めに規約を見直して改正しておくと良い。
管理組合と自治会・町内会は別の団体であるが、同じ人が町内の役員と、管理組合の理事を兼務していることが多い、管理組合は法律により加入が強制されているのに対し、自治会・町内会は親睦団体であって加入は任意である。しかし、現実には管理組合が、自治会を内部に抱えているような事例もあるし、役員会は別個だが事務局は兼務している例もある。また、管理組合の退任者が翌年の自治会の役員になる例もあれば、自治会がないところもある。このような現実も直視するべきである。
地方自治体との関係管理組合には補助や援助をしないところが多い。
自治会・町内会には補助や援助は問題なくできる。

地方自治体の中には、管理組合を自治会・町内会同様に自治組織と認定して補助や援助を行っているところもあるそうです。
関西では賃貸人が管理組合の役員を務めている例が3割程度あるそうです。
関東や九州ではあまりそういう例はないようです。

分譲会社等の責任は?
建物の区分所有等に関する法律では、区分を所有していない、開発会社、建設会社、販売会社、管理会社については、何の責任も規定せず一般法にゆだねています。
最初の管理規約は、開発業者のために管理規約も、完売を目指して売りやすいように作成するし、最低限の要件を備え違法でなければ、建物の敷地ではない土地に駐車場を作って分譲して、販売会社の利益にしてしまう。また規約で最初から、分譲会社の経営する管理会社に全部管理委託を行う。本来管理組合の収入にするべき収入を分譲業者や、管理会社の収入としてしまって、その分区分建物を安く売ることができた、又は、管理委託の方が簡単で安上がりだ、といってすましている。管理規約は購入する前に、良く読むべきである。いいかげんな管理規約で、将来大きな負担が予想されるマンションは、購入するべきではない。
分譲する前に、第三者機関によりマンションの構造、価格、管理規約、管理方法等を審査して、評価し、結果を公表する制度を確立すれば良いのだが。

マンションが災害に遭ったとき
阪神淡路大震災で損壊したマンション2532棟
大破 83棟
中破   108棟
軽微  1988棟

そこで、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法を制定して
5年間で建替え済 111棟
補修済 2405棟 合計2516棟という結果だそうである
この数字で見るかぎり阪神淡路大震災で損壊したマンションの建替え、補修に関しては、基本的に必要に迫られて大きな利害の対立がなかったかに見える。
しかしながら、震災から7年を経過した現在でも法廷で建替えか、大規模修繕かで争っている例もある。

建替え決議をする場合、一人で数個のマンションを所有している人がいる場合に62条は議決権の要件を区分所有者及び議決権の各5分の4以上の集会の決議としているが、床面積は分かりやすいが、一人で数個所有している場合に、区分所有者としては一人として計算するのか所有個数分の人数として計算するかの問題について地裁の判断は、1人としたものである。

阪神淡路大震災で損壊したマンションについて、損壊した建物が危険となり居住者がほとんど退去して、居住していないにもかかわらず、管理会社は建物の管理も現実には実行していないのに、管理業務委託費を被災したマンション住民が途方にくれているにもかかわらず、管理組合の口座から自動引き落としで天引きし、住民が気付いた時には、管理費、積立金、駐車場料金などが消えていた例が多く見られたそうである。返還請求にも応じないところが多いそうで、現在も係争中のところもあるそうです。

管理組合の崩壊
管理組合は、居住者が減少していけば、管理費が不足し建物の維持管理ができなくなり、次第に崩壊していく。原因を調査してみると

イ、理事長が不正を行い、管理組合の資金が底をついて、資金の補充ができない場合活動ができなくなる。
ロ、建物が老朽化したため、退去者が多くなり、管理が不可能となり、管理組合が崩壊
ハ、理事会が、一部の利権グループにのっとられて食い物にされるため、これに反対する所有者が管理費を払わなくなり管理組合が崩壊する。
ニ、販売不振のため一部分譲状態で販売会社が倒産、一部の入居者のみでは管理費用の負担ができない。

自主管理か管理委託か
自主管理  管理組合が自ら建物管理業務を行う
管理業務を行う上で具体的な、清掃・集金・補修等の業務を他人にさせることもできるが、契約により、請負または履行補助者として雇うのであり業務そのものは委託しない。
なお、自主管理のためには、下記の3点セットが必要なので所在と管理には注意しておく。
預金通帳、区分所有者名簿、竣工設計図書(建築設計図書、屋内給排水衛生設備設計図書、電気設備設計図書)

管理委託  規約により管理業務の全部または一部を管理会社等に委託することを認める。
管理が合法か不正がないか管理する体制を整備しておく、管理費の横領背任が行われないように、領収書の発行、集金、入金事務、出金・支払の管理を一人の人間にさせない。
管理組合名義の代行預金の担保提供がなされないように、通帳印鑑の保管を理事長が責任を持って管理する。

管理組合と管理会社の関係
マンションの管理の適正化の推進に関する法律が必要な程今まで管理が十分なされていなかった。
預金を管理会社名義の預金としておくと会社破産の場合否認権行使の対象にされるおそれがある。
豊栄土地開発平成4年に破産
建物管理会社 栄高同時に破産
修繕積立金8億円保管破産直前に5億円返還
破産管財人よりこれを否認権行使の対象であるとして3割の返還を要求

管理会社と管理組合との契約を再点検する。管理費の預金口座からの自動引き落としを認めない、本来管理費が毎月同じであるはずがない、全部が固定費であるという発想がおかしい。管理会社により同じ管理業務をしても価格に差があり、見積もりを比較して再見積もりを要求すると価格が下がるという現実がある。

管理組合の理事長や理事の責任
 管理組合の運営が違法ではないが不当な場合や、管理費や修繕費の水増しピンハネ等、また管理組合と理事長である管理者の関係が妥当でない場合、特に違法ではないが不正、不当な管理に対しての責任が不明確である。
理事長は誰に対して(管理組合に対してか、所有者に対してか)どういう責任を負うのか、その責任の範囲が明確でない。
義務を怠った場合に誰が責任を追及するのか、訴訟費用の負担をどうするか。

このような場合区分所有法では

@組合財産に損害を与えた場合には、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものが、管理者に対し34条3項で集会の召集を請求し、
A召集された集会で、52条の解任請求をした後、新しい理事長を選任する。
Bその新しい理事長が、前任の理事長に損害賠償を請求する。
管理者の責任追及としては、52条の決議で解任請求のみである。

52条の解任決議に満たない数しか、区分所有者の議決権が集まらなかった場合ほかに方法はないか。建物の区分所有等に関する法律には規定がない。
多数決原理で決議が否決された以上追求はできないと考えるべきか。

@商法267条の株主代表訴訟の類推適用ができないか
東京高裁昭和54・3・27 判例タイムス388
総会決議の手続き及び内容の瑕疵の是正が、団体の内部規約に定めるところによる団体の自治に委ねられる事をもって十分とし、取消し訴訟による法的規制を加える必要を認めなければならないものとは考えられない。そうすると、本件総会決議に商法247条の規定を類推適用する事はできないものといわなければならない。
A債権者代位権の行使
B準共有の保存行為否定する見解が多い
区分所有者相互の権利義務及び関係は、一応建物の区分所有等に関する法律により整備されているから商法267条の株主代表訴訟の類推適用はできない。
区分所有等に関する法律によれば、決議や規約により住民自治を徹底できるのであるから、権利能力なき社団にあっては、その意思決定には、多数決原理が働くからその範囲での当不当は、法廷では争えない。
管理者と個々の組合員ないし、共有者としての組合員の全員との関係は、委任の関係ではないから、仮に決議が違法であったとしても個々の組合員が責任を追及する事はできない。
理事長は管理組合の費用で応訴するのに対し、(なかには、数千万の弁護士費用を管理組合の経費として支払っている例もある。)区分所有者は、自ら訴訟費用を立替え勝訴した場合(弁護士費用を)求償できるとの規定がないので、訴訟費用については求償できるかどうか不明確。
罰則についても69条の規定だけでは不十分
管理会社及び管理者間の不正不当な取引については、規約で、忠実義務、賠償責任、を明確にし、不当取引の認定について予め規約で第三者認定機関を定めておくと良い。

管理規約の遵守
@規約の周知徹底を確認する。管理規約でペットの飼育を認める場合も、届け出義務を定め、ペットの種類も限定し、苦情が出た場合に処理方法を定め、規約の遵守を呼びかける。管理規約の違反者には、違反の種類、程度に応じ、反則金を定める。

Aピアノ演奏による騒音については、防音設備を義務付ける、演奏時間の制限等規約で定める。管理費の滞納者については高率損害金を課す。
利用規定の違反者にも反則金の条項を作って、遵守を促す。

B暴力団風の言動で、他の区分所有者に害をもたらす使用であると理事会で認定した所有者若しくは入居者には退去を求めることができる条項を規約に追加しておく。その際水道、電気の供給をとめることができる旨のの規定も付け足しておく。

C有害な宗教団体の使用、及びその信者による使用も、規約で禁止する。
信者が契約に違反して入居し、宗教団体の集会所若しくは多人数での住居使用に対しては、警告の後退去を求めることができる規定を置き、更に警告に従わない違反者には高額の損害金を課す。

D使用が管理規約に違反するかどうかの認定に関しては、理事会の認定に従い、異義申立旨をせず、総会及び理事会の決定に従う旨の条項を入れ、入居の際に同意書をもらっておく。管理規約
の利用規定は、マンションに出入りするものに及ぶ旨の規定を入れる。

建替え・長期修繕計画・大規模修繕
 マンションの建替え及び大規模修繕には、多額の費用を要するため、計画の段階から、管理組合の理事長は激しい営業攻撃にさらされることとなる。
 利害関係は管理組合のみならず、計画の作成、見積もりの時点から、工事完成までの間、管理会社、建設会社、その下請け業者、資金を融資する銀行、区分所有者、近隣の住民、それぞれが異なる利害関係を持ち、ビジネスチャンスと考えたり、政治家に圧力をかけられたり、計画に反対されたり、利用されたり、管理組合の理事長は、理事会の運営、一部の業者の応援をする区分所有者からの不満、攻撃、中傷にさらされたりと、激務にさらされることとなる。
 更に、多額の費用を要するため、どうしても区分所有者に多額の負担を強いることとなる。そのため経済的に負担できない区分所有者は、現在の状態が気に入っていると称し現状維持を、希望し計画に反対することとなる。
 対策としては、最初からマンション管理規約に、マンションの建替え、長期修繕計画の作成、大規模修繕について区分所有者が反対しないような計画を作成し、修繕等がしやすくしておくことである。

エピローグ
 最後にどうしたら資金的にも健全で、トラブルのない、公正な運営がなされる管理組合にできるかであるが、
@無関心な区分所有者を上手に協力させる・・・賃貸にしている方とか
A自主管理にして、管理組合法人を設立し、法的責任を明確に
B行政と連係しながら、管理規約を改正し、住民自治の一貫として、行政の援助を受けながらマ ンション管理運営をしていく。
C管理会社を上手に利用してマンションの管理組合の資産を増加させて、資産価値を高めるしかない。

その目的を達成するには、区分所有等に関する法律46条の規定の活用である。46条では、規約及び集会の決議が区分所有者のみならずその特定敬称人及び建物の使用方法に関しては、専有部分の占有者も拘束するからである。




参考文献

問答式 改正区分所有法と登記実務新日本法規

マンションの資産価値を高める本講談社中島猷一

阪神淡路大震災の法律相談民事法務研究会
58頁区分所有法関係

マンション管理紛争の現実   −崩れゆくマンション−信山社 吉田武明


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